ガンプラ洗脳計画009 嫁とハサウェイ(1)

嫁のハサウェイ_サムネ 嫁vsガンプラ

「そういえばあなたもうすぐ誕生日よね。」

ある日の晩、ふと思いついたように嫁が言った。

「そういや、そうだ。」

この年になると自分の誕生日もあやふやだ。

そういえば今年いくつだっけ?

四十を過ぎたころから、歳を数えることをしなくなった気がする。

「何か欲しいものとか、して欲しい事とかある?」

ほう。

なんだよ。可愛いこと言うじゃないか…。

20年も連れ添った嫁がこんなこと言うなんて。うれしい… 

とはならない。

我が家ではそうはならないんだ。

逆にこんな時は要注意だ。

予防線をはっておこう。

「いや… 今は特にないかな。」

あたりさわりのない言葉でさらりとかわす。

間違っても、「新しい塗装ブース買っておくれ」とか、「プレバンで来年発売予定のガンプラ予約させておくれ」、などと言ってはいけない。

「あたしはねぇ!そんなものをあなたにあげたいわけじゃないのよ!」

と、こうなるのは目に見えている。

理不尽なはなしだが。

そう。

これは彼女がワタシにしてあげたいことが、もうすでに彼女の中で決まっているパターンだ。

「なんでもいいのよ。なんかないの?」

「そうだねぇ。〇〇(嫁)がしてくれることならなんだって嬉しいんだけどね。」

歯の浮くような言い回しで嫁の言葉を交わしながら、嫁が納得する方向を探ってやる。

今一番大事なことは、彼女が何をしたいと考えているかだ。

ワタシの誕生日なのに。

なんて、親切な旦那だ。

自分で言うのもなんがだ、俺は旦那のプロだな。

えらいぞ。

。。。

「じゃあ、外で食事して、映画でも観ない?」

嫁が言った。

なるほど。映画が見たかったわけね。

「いいよ。何が観たいの?」

「だめよ。あなたの誕生日なんだから、あなたが決めないと。」

そうくるか。んー。

難しい。彼女にはきっと見たい映画があるに違いない。

これ外すと機嫌を損ねるのは間違いない…

気が重いなぁ。ってゆうか。ちょっとめんどくさい。

「ははッ そうだねぇ…」

恐らくは、ジャニーズのタレントか、推しの俳優が出ている映画なんだろうけど…

ワタシの中にそんな選択肢などあるはずもない。

例えば、ここで「閃光のハサウェイ観に行こう」っていったら嫁はどんな顔をするだろうか。

ふと、そんな邪な思いが心を横切った。

ワタシの誕生日なんだからたまにはわがまま言ってもいいのでは?

まあ、冗談半分、ダメもとで言ってみるか…

「閃光のハサウェイが観たい…」

すると

「なによそれ?」

いつもと違う旦那の反応に嫁が少し意外そうな表情をみせた。

よし。悪くない。

隙が出来たぞ。

たたみかけろ!

「いやね。これガンダムの映画なんだけど、4DXなんだよ!椅子とか動くし、エアとかいろいろ噴き出て、3Dでさ、とにかくすごいらしいんだよ!会社の〇〇さんも行ったらしいよ!」

嫁とガンプラ09-1

「面白いの?」

「面白いも何も、映像とかもすっごい綺麗だし、空襲のシーンがあるらしいんだけど、ほんとに死ぬかと思うくらいらしいよ。」

「へぇ~ そんなにすごいんだ。」

「そーなんだよ。とにかくドドッーンが、ババーンで、ガガーってなって4DXが凄いらしいんだよ!」

「へぇー。なんだか分かんないけど、面白そうね。わかった。それ、予約しておくわ。」

「えっ? マジで、ほんとに⁉」

意外とあっさり決まった。

決まる時ってだいたいこんなもんだ。

やいやい。

言ってみるもんだなこれ。

まさかこの年で嫁と二人でガンダムを観ることになるとは。

ふふっ。

いいな。

誕生日が待ち遠しいのはいつぶりだろう。

その日はそんないい気分で床に就いた。

そして翌日の晩。

冷ややっこに醤油を垂らしながら嫁が言った。

ちょっと。ボクのにもかけてよ。。

「予約取れたわよ。」

「マジで!ありがとう。」

てか、ハサウェイは、平日なら予約などしなくても余裕で観れるはずだけどね。

「でもハサウェイ?はもう4DXやってないって。今、4DXはゴジラなんだってさ。」

「ふ~ん。そうなんだ…、ん? 予約したのってハサウェイだよね?」

恐る恐る聞いてみた。

「ゴジラよ。だからもうこの時期に4DXで観れるのはゴジラだけって言ったじゃない。」

そうきたか…

なんてことだ…

まあ、考えてみれば当たり前か。

でもゴジラは見たくないよ…

ふたりとも見たくない映画を4DXで観ることほど馬鹿らしいこともないだろう。

今ならまだ間に合う。

キャンセルしてもらおう…

でも、きっと怒るなコレ…

なんで自分の誕生日なのに憂鬱な気分にならねばならんのか。

むむぅーー。

理不尽!!!


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