嫁の掌で小さく丸まっている白文鳥
その名は大福。
私の家に突如やってきた新しい家族だ。
嫁になついているときの可愛さとは裏腹に、私に対しては、超攻撃的で凶悪な一面を見せる恐ろしいヤツ…。
しかしこの頃、そのやくざな振る舞いが度を越しているように思う。
あの嫁にまで、牙をむきだした。(鳥に牙はないが、くちばしがそんな感じ。)
どうやら換羽期に入ったらしい。
鳥の羽は生え変わりの時期があるらしく、それを換羽期というのだそうだ。
普段から羽のお手入れを怠らない綺麗好きな奴らにとって換羽期はどんどんと羽が抜けていくので、ストレスがたまるらしい。
白い翼の隙間からピンク色の地肌が見えて少し痛々しい。
なるほどな。
それでいつにもまして、凶暴な訳だ。
そんなわけで、ケージから出してやると誰かれ構わずゴロをまき始める。
完全にチンピラ鳥だ。
しかし、嫁のほくろにとびかかる様は見ていて気持ちがいい。
「ぎゃーーー!いたい!」とか「こっ ころされるっ!」などと叫びながら嫁が逃げ回る。
随分と楽しそうじゃないか。
大福よ。
もっとやりなさい。
ストレスをためるのは良くないよ。
この換羽期だが、羽は抜けるばかりではない。
抜けるばかりでは、はげ鳥になってしまう。
頭頂などは、はげ鳥にふさわしいはげっぷりだが、よく見ると、細い針のような形で新しい羽が生え始めている。
つんつんした感じだ。
シナンジュ…。
そう。
頭頂だけ見るとシナンジュ(スタインの方)に少し似ている。
ん?まてよ。
ちがう。
ちがうな…。
あの白い翼を広げた感じ、凶悪な顔、とがったくちばし、そして、禿げた羽の間からみえるピンク色の肌…、
何かに似ている……
!!
キュ、キュベレイだ!
奴はキュベレイに似ている!
いつの間にかハマーンの跳梁を許すことになるとは!
ハマーンめっ!
恐ろしいヤツ!
さて…。
大好きな名機に似ていることが分かればなんとなく愛着が湧いてきてしまう。
やれやれ。
私の弱いところだ。
大福め… かわいいやつよ。
その大福も、今では、私の掌でフンをするまでになった。
それは懐いているわけではないと嫁は言うが、そんなことはない。
我が家にやってきたころの奴の荒ぶりようにくらべたら、俺たちは心を通わせ始めていると言っていいだろう。
完全に分かり合う日もちかい。
しかし、奴のフン害には少々困っている。
嫁がやたらと放鳥するので、ソファーや床のあちらこちらに白いフンの痕跡が残っている…。
やはりこうなるか…。
だからイヤだと言ったのに…
フンをする瞬間が私にはわかると嫁は言うが、肩や背中に白いフンの痕跡がまだらについた嫁の部屋着をみながら彼女がまるでわかっていないことが私にはわかる。
ほぼほぼ全弾命中させられとるやないか。
しかし。
実は私には彼が発射する瞬間が分かる。
奴は発射する瞬間、わずかに震えるのだ!
ブルルッ!(来るっ!)
だから、わたしはいまだ被弾したことはないっ!!
わたしは大福のフン攻撃をよけているのだよ。
君とは違うのだよ、君とは。
遠方から放たれた攻撃などそうそうあたるものではない。
そう。あたらなければどうということはない!
さて…。
早くキュベレイ・アンベリールに着手したい。
積プラの山で眠っているあいつを完成させたら、大福の巣に入れてやろう。
キュベレイと大福が兄弟のように寄り添う姿を見れば、嫁も泣いて喜ぶに違いない。
間違いなくわたしもつくるわと言い出すだろう。
ふふっ
私のガンプラ洗脳計画は順調に進行しているな。